日本製ファンタジーの源流である例の作品について語る

ねぇお母さん、"呪われた島"ロードスって遠いの?」「黙って泳ぎなさい
・・・という書き出しでお馴染み(違います)『ロードス島戦記』が生誕25周年を迎えたということで、新たな商品展開が行われている。


『ロードス島戦記』生誕25周年(角川書店)

それに関連して、昨年秋に全話一挙放送されたOAV『ロードス島戦記』を観てみたので、それについて語ってみる。


OAVがリリースされたのは1990~1991年。当時のアニメ界はテレビアニメが主流で、OAVはマニア人気の高いテレビアニメの続編(後日談)が中心。巻数も前後編とか全4話とかだった。
そんな中、「人気のファンタジー小説(当時は「ライトノベル」という言葉自体が無かった)が原作で、全13話の長編」という、まさに「角川グループが総力を挙げた一大プロジェクト」と呼ぶべき破格の扱いだった。。
中身も、当時のOAVの売りだった「カネを出して観る価値がある」を証明するクオリティの高さ。結城信輝氏のキャラデザインといい、要所要所での一枚絵といい、今のアニメと比べても遜色が無い綺麗さだった。
キャラクターで言えば「元祖エルフ娘」ことディードリットが美しいのなんの。普段は強くて凛々しいお姉様
風なんだけど、時折見せる人間臭さ(パーンに素っ気無く扱われて怒ったり)が、堪らなく可愛いモンさ。
そして、ストーリーの中で頻繁かつ自然に出て来るファンタジー用語。「魔術師」に「精霊」に「ゴブリン」に「シルフ」に「ウンディーネ」等々。観れば観るほど「あー、このファンタジー用語もこの作品で知ったなぁ」と感慨深くなったりする。同じようなボーイズ&ガールズも多いはず。
まさに『ドラゴンクエスト』と双璧を成す、日本のファンタジー作品の源流というべき記念作だ。


ストーリーの方は、原作小説が連載中だったこともあり、基本的なキャラクターや展開は踏まえつつも大幅に再構築されている。
具体的に言うと、8話までは原作1巻の『灰色の魔女』がベース。以降は「火竜山の魔竜」「支配の王錫」「邪神カーディスの復活」等、続刊のエピソードを盛り込んだオリジナルストーリーになっている。
原作から割愛・改変された箇所も多いので、そこを描いた続編も期待されていたんだけど実現せず。ラジオドラマやPCゲームでは描かれたらしいけど、やはりハイクオリティのOAVで描いて欲しかったなぁ。


アニメ版としては1998年放送の『ロードス島戦記-英雄騎士伝-』があるけど、これはOAVの続編ではなくリメイク。物語も序盤こそパーンとディードリットがメインだけど、すぐにスパークとニースの「次世代キャラ」に世代交代。実は僕、この『英雄騎士伝』をOAVの続編かと思って観たんだけど、まず声優陣が一新されている。その一方で物語的には最初からではなく、OAVのメインだった『灰色の魔女』の後から始まっていて、原作やOAVの未読未見者には分かり辛い内容になっている。
厳しい言い方だけど、OAVファンにも新規ファンにも不親切な作品だったっけ。

ともあれ、25周年の商品展開で盛り上がっている中で、次に期待してしまうのが再アニメ化。
今だったら『機動戦士ガンダムUC』や『宇宙戦艦ヤマト2199』や『ベルセルク黄金時代篇』のような「劇場版○部作」で、20年前のOAVシリーズのようなハイクオリティを期待してしまう。
原作小説の新装版やリマスター版OAVの売上次第では、ひょっとしたら・・・。