声優さんアーリーデイズ特集(井上喜久子編)

ベテラン声優さんの若き日の出演作を紹介する企画「アーリーデイズ」の再開第6弾。
今回は皆さんお待ちかねだったであろう(?)、井上喜久子さんのアーリーデイズを紹介します。

井上喜久子 ベスト・コレクション

井上喜久子 ベスト・コレクション

「若き日の出演作」と言っても、皆さんご存じの通り喜久子さんは「17才」です!
20年以上前から「17才」を名乗っていて、今年で御年20歳になる娘さん(言わずと知れた声優・井上ほの花さん)がいらっしゃって、何より今年で声優歴30年の大台に突入したけれど、それでも喜久子さんは「17才」です!


そんな喜久子さん、声優としては様々な作品に出演し、その一方でご本人の「井上喜久子・17才」という唯一無二のキャラクターで絶大な人気を誇っているのはご存じの通り。
そのルーツとは、アーリーデイズとは、一体どのような作品にあるのか。それを紐解いて行きましょう。







■1989年『らんま1/2』(天道かすみ
TVシリーズ「らんま1/2」Blu-ray BOX (1)

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TVシリーズ「らんま1/2」Blu-ray BOX (2)

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決定盤「らんま1/2」アニメ主題歌&キャラソン大全集

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高橋留美子先生の同名漫画のアニメ化作品で、ラブコメ・ギャグ・バトルを盛り込んだ賑やかな作品。
これが初レギュラーとなった喜久子さんが演じた天道かすみは、ヒロインである天道三姉妹の長女で一家の「お姉ちゃん」にして「お母さん」。いつも笑顔で優しくて、でも天然ボケという、ファンがイメージする「喜久子さんが演じるキャラ」の原点にして最大公約数にして完成形。それをデビューの時点で既に演じているのは、もはや天の配剤と言うべきか。
『らんま』は喜久子さんの他にも、山口勝平さん・林原めぐみさん・山寺宏一さん・高山みなみさん・関俊彦さんなど、90年代にブレイクして現在の声優ブームの礎を築く声優さんが大勢出演している記念碑的な作品。未見の方はご一覧のほどを…。


■1990年『ふしぎの海のナディア』(エレクトラ
SF冒険小説の古典的名作『海底二万里』を大胆にアレンジしたアニメ作品。NHKのゴールデンタイム(!!)で放送されて大人気となり、制作を手掛けたGAINAX庵野秀明監督の出世作となった。
喜久子さん演じるエレクトラは、主人公たちが乗り込む万能潜水艦ノーチラス号で副長を務める才女。普段はクールで毅然とした雰囲気を漂わせ、時には優しさや嫉妬など可愛らしい一面を見せながら、船長のネモをサポートする知的なお姉さんキャラ。
しかし胸中ではネモに対して愛憎入り混じった感情を抱いており、それが衝撃的な展開を呼ぶことに・・・。


■1993年『ああっ女神さまっ』(ベルダンディー
藤島康介先生の同名漫画のOAV化作品にして、もはや説明不要な喜久子さんの出世作
喜久子さんが演じるベルダンディー北欧神話に登場する女神三姉妹の次女で、優しくて慈愛に満ちて程良く天然ボケという、まさに「喜久子さんを女神化したキャラ」としか思えぬハマりよう。
また、姉妹役として共演した冬馬由美さん・久川綾さんと、当時としては先駆的な作品由来の声優ユニット「GODDESS FAMILY CLUB」を結成し、CDリリースやイベントなどが積極的に行われた。その延長で喜久子さんも個人名義のアーティスト活動をするようになり、まさに「アイドル声優井上喜久子」の誕生とブレイクに最も貢献した作品。
作品展開はOAV後の2000年に続編となる劇場版が公開。そして2005年・2006年にはリメイクとなるテレビアニメは放送されるもメインキャストは喜久子さんを筆頭に全員続投。これも喜久子さん演じるベルダンディーの魅力と人気があってこそ。


■1996年『セイバーマリオネットJ』(パンター
EMOTION the Best セイバーマリオネットJ DVD-BOX

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セイバーマリオネット・ベスト

セイバーマリオネット・ベスト

あかほりさとる先生原作の同名ライトノベルのアニメ化作品。「人類が男性しか存在しない」という未来の植民星を舞台にした、女性型アンドロイド「マリオネット」の活躍がコメディタッチで描かれる。
喜久子さん演じるパンターは主人公たちのライバルの一人で、粗野な言動の武闘派キャラ。それまでは主に上品なお嬢様キャラを演じていただけに、これは異色のキャスティング。
なお、続編『~JtoX』(1998年)との間に作成されたOAV『またまた~』(1997年)は産休時期だったため篠原恵美さんが代役を務めている。ちょうどこの頃にご結婚&出産という、人生の節目を迎えていた。


■2001年『キャプテン翼<2001年版>』(大空翼<小・中学生時代>)
キャプテン翼 ROAD TO DREAM GOAL.1 [DVD]

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現在でも通算4回目となるアニメ版が放送されている、みんなが知ってる超有名サッカーアニメの、みんなが知ってる「ボールはともだち!」な主人公。
しかし、その大空翼クンを喜久子さんが演じていたことを知っている人は、そして知っているけど信じられない人はどれだけいるだろうか!喜久子さんにとっては兼役ではなく本役(それも主人公)で少年キャラを演じた極めて珍しい作品。なお、ライバルの日向小次郎役も松本梨香さんと、既存のキャライメージの一新を狙ったようなキャスティングになっていた。
喜久子さんの30年に及ぶ声優キャリアの中で最初の(そして唯一になるかもしれない)熱血少年キャラは一見の価値あり!


■1995年『おさかなペンギン』
おさかなペンギンCD

おさかなペンギンCD

最後は声優ユニットの紹介。喜久子さんが当時アーティスト活動をしていたポニーキャニオンのレーベルメイトにして、期待の若手声優として売り出し中だった岩男潤子さんと結成したユニット。ユニット名の由来は、喜久子さんは当時「おさかな(マンボウ)の生まれ変わり」を自称しており、岩男さんは「緊張すると手がペンギンのようになる」ため。喜久子さんが「永遠の17才」となる前に結成されたからこそ名乗れた、奇跡のユニット名だ。
その活動はデビュー曲『アニメ雑誌の編集は3日やったらやめられないおさかなペンギンのテーマ』とミニアルバムのリリースで休止し、その後はイベント限定で数回復活したに止まっている。今なお第一線で活躍しているベテラン声優が、声優ブーム黎明期の「アイドル声優時代」に一瞬だけ結成した、幻にも似た伝説のユニットとなった。
なお、喜久子さんの「マンボウの生まれ変わり」というのは並行して今なお続いており、公式サイト名の「@manbow(あっとマンボウ)」の由来となっている。


・・・と、井上喜久子さんのアーリーデイスを振りかえってみました。井上喜久子さんが主に演じるキャラクターは、デビュー当時から一貫してお姉さん・お母さんと「年上ヒロイン」でした。それ故に(失礼な表現をすれば)「劣化」せず、歳月を重ねるごとに深みを増してきます。そして一見するとジョークと思われがちな「永遠の17才」という肩書がファンやアニメ界に広く受け入れられたのも、喜久子さんが声優として積み重ねてきたキャリアと、ラジオなど各メディアで披露されてきた「井上喜久子本人」の魅力が受け入れられたからこそ。
そう!いつまでも「心が思春期」なファンにとって、「17才のお姉ちゃん」といえば明るく優しくちょっぴりセクシーで程良く天然ボケな憧れの女性!
そして、その憧れを演じるキャラクターのみならず、御本人のキャラクターで体現し続ける喜久子さんこそ、まさに「憧れのお姉ちゃん」であり、それ故に「永遠の17才」なのです!