ぽすたるワイド的ニュースデスク(『美少女戦士セーラームーン Crystal』編)

今なお衰えぬ人気を誇り、この夏にはリメイク版、否、「新作」として復活した『美少女戦士セーラームーン Crystal』。
今回は同作の神木優プロデューサー(東映アニメーション)のインタビュー記事を紹介。

美少女戦士セーラームーン 完全版(1)

美少女戦士セーラームーン 完全版(1)



■新『セーラームーン』はなぜニコ動配信なのか~プロデューサーに聞く(ORICON STYLE)

――ファン待望の新作アニメ『セーラームーン』。すばり、ターゲット層は?
【神木】セーラームーンを知っている方にも知らない方にも観ていただきたいです。ですが、あえて言うならば、昔『セーラームーン』に夢中だった少女たちにもう1度観てほしいという思いがあります。


――というと、アラサー世代ということでしょうか。
【神木】はい。セーラームーンを観ていた少女たちは、現在20代前半から30代前半となっています。しかし、その世代は昔はアニメを見ていたが、大人になり卒業している人の多いアニメーションにはとって難しい層。『セーラームーン』はそんな女性たちに訴えられる数少ない作品だと思います。


――しかし、多くの方に観てほしいのなら、なぜテレビ放映しないのでしょうか?
【神木】ずばり、世界同時配信を実現したかったからです。ネット配信をすることにより、ほか国の方も同時に観られるというメリットがあります。『セーラームーン』はワールドワイドなコンテンツなので、それを生かしたかったのが一番の理由です。

まずはインタビューの前編。
神木プロデューサー自身も、恐らくは『セーラームーン』直撃世代と思しき女性の方。それ故に「夢中だった少女たちにもう1度観てほしい」と語る言葉に強い思い入れを感じてしまう。
そして「どうしてテレビ放送しないのか」という、多くの人が抱いてる疑問に対しても「全世界同時配信をしたかったから」と、そのネームバリューに絶大な信頼を寄せている。
これも、ネット環境が整っているであろうアラサー世代がメインターゲットというのも考慮したんだろうな。


■新『セーラームーン』、なぜキャラデザ変更?~プロデューサーに聞く2(ORICON STYLE)

――今作で掲げる「リメイクではなく、武内直子先生の原作をゼロからアニメ化するプロジェクト」の意図は?
【神木】前作のアニメは、原作漫画とほぼ同時スタートだったため、アニメオリジナルの要素が多く盛り込まれることになりました。それから20年が経ち、今回のアニメ化では「原作が完結している」点が最大の違い。私たちがやりたいと思ったのは、あの時終わっていなかった原作がいま終わっているからこそのアニメ化。例えば今作の第1話のように、冒頭に前世のシーンを入れることは前作の第1話ではできなかったこと。布石も打てるし、細かい演出もできる。原作の完全版といってもらえるとうれしいです。

続いてインタビューの後編。
コンセプトは「武内直子先生の"原作"に準拠」だという。元々『セーラームーン』がアニメ化前提で漫画連載がスタートした作品なので、武内先生の漫画は「原作」というよりもコンセプトやキャラクター設定の「原案」のようなもの。ストーリー展開も月刊誌である「なかよし」連載だったので、毎週放送のアニメ版とかかなり異なっていた。
他にも、「少女漫画」としての雰囲気を多分に漂わせていた武内先生の作風もあり、アニメ版とはかなり別物な印象さえあった。僕個人もリアルタイムで原作もチェックしていたんだけど、正直アニメ版とは「同じタイトル・設定・キャラクターを使った別物」と受け止めていた。


一般に『セーラームーン』と言えば、テレビ放送で視聴者の絶対数も多かった分、アニメ版が「デファクトスタンダード(事実上の標準)」になっている。そのせいで武内先生の漫画も、アニメ版ありきな文字通りの「原作」と考えられがちだった。特に「なかよし」を読んでない女子や大きなお友達(←当時の僕を含む)にとっては。
でも、当時「なかよし」を読んでいた女子にとっては、漫画版も立派な『セーラームーン』であり。さらに言えば、アニメ放送から20年近く経ったことで「アニメは観てないけど、漫画は単行本で読んだ」というファンも増えたのか。ここに至って「原作」が単なる「アニメの原作」ではない、「武内直子先生の漫画作品」として評価されるようになったのか。それが今回の「原作漫画に準拠したアニメ化」に至ったんだろうな。


もっと突っ込んだ考えをすると……「美少女戦士モノ」における直系の子孫である『プリキュアシリーズ』との差別化を図った気がする。「女子向けアニメ」としては、既に『プリキュア』が確固たる地位を築いていて、ネームバリューはあれども「リメイク」である『セーラームーン』では入る余地はない。そこで「女子向けのテレビ放送」とは真逆の「アラサー世代向けのネット配信」になったのか。
ともあれ、「隔週全26話の1年間シリーズ」というネット配信アニメとしては異例の長編なので、これからどんな展開になるか楽しみだ。