声優さんアーリーデイズ特集(水樹奈々編)

ベテラン声優さんの若き日の出演作を紹介する企画「アーリーデイズ」の再開第4弾。
今回は水樹奈々さんのアーリーデイズを紹介。

THE MUSEUM III(Blu-ray Disc付)

THE MUSEUM III(Blu-ray Disc付)

深愛 (しんあい) (幻冬舎文庫)

深愛 (しんあい) (幻冬舎文庫)

奈々さんと言えば、声優活動とアーティスト活動を長年に渡ってハイレベルで両立していることでお馴染み。声優としては自身がメイン出演を務めて、さらに主題歌も担当する「水樹奈々アニメ」が数多く作られ。アーティストとしても紅白歌合戦など多くの歌番組に出演し、日本武道館や東京ドームなどでのライブも精力的に行っている。まさに21世紀になって誕生した「声優アーティスト」の先駆者にして完成形と言うべき活躍を見せています。


そんな奈々さんにも「アーリーデイズ」は存在するわけで、今振り返ると意外な一面が垣間見えるかもしれない「アーリーデイズ」を紹介します。







■1998年『NOeL ~La neige~』(門倉千紗都
NOёL~La neige~(限定版)

NOёL~La neige~(限定版)

NOeL La neige 門倉千紗都ミニアルバムdepart Chisato×Nana

NOeL La neige 門倉千紗都ミニアルバムdepart Chisato×Nana

奈々さんの声優デビュー作となるゲームで、発売元はパイオニアLDC(現:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)。その縁で同社がスポンサーをしているアニラジ飯塚雅弓のいたいのとんでけ!』では箱番組がオンエアされていたり、奈々さんが番組アシスタントを務めていた時期があった。今やキングレコードの看板声優アーティストである奈々さんが、実は他社からデビューしていたのも今となってはトリビア
奈々さん演じる門倉千紗都はキャラ名義でのミニアルバムもリリースしていて、これが事実上の「水樹奈々デビューアルバム」とも言える。キャラクターソングで、それも非キングレコード作品故にライブなどで披露されることはないけれど、ファンならば押さえておきたい一作。


■2001年『シスター・プリンセス』シリーズ(亞里亞
Sakura Revolution

Sakura Revolution

Private Emotion

Private Emotion

Cherry blossom

Cherry blossom

『電撃G's magazine』の読者参加企画から誕生したメディアミックスのアニメ版。「12人の妹たちがヒロイン」という、妹萌えブームの火付け役にして極北。なお、制作がキングレコードだったことから、奈々さんとキングレコードが出会う切っ掛けになった重要な作品。
奈々さん演じる亞里亞(ありあ)はフランス人形のようなフリフリのドレスを着たロリっ娘で、のんびり屋で泣き虫で甘いお菓子が大好きという末っ子系妹キャラ。しかし、中の人である奈々さんを反映して「歌唱力が高い」という設定も。それ故にファンの間では「歌うとキャラが変わる」とか「キャラソンはガチ水樹」と語り継がれている伝説的なキャラ。
なお、本作で共演している桑谷夏子さん・望月久代さん・小林由美子さんと期間限定ユニット「Pritsプリッツ)」を結成してリリースやライブも行っていた。その意味でも「声優アーティスト・水樹奈々」の源流に位置する。


■2002年『七人のナナ』(鈴木ナナ)
記念すべきテレビアニメの初主演作品。しかもタイトル&キャラ名が「ナナ」というのは、何とも運命的。今となっては「水樹奈々を売り出すために作られたスターシステム的作品」とさえ思えてしまう。
物語は、平凡な女の子・鈴木ナナが、ひょんなことから性格の全く異なる7人(本人含む)に分裂してしまい、そこで巻き起こる騒動を描いたコメディ。なお、奈々さん演じる本家本元のナナ(ああ、ややこしい!)の他に、分身のナナをデビュー間もない頃の中原麻衣さんや名塚佳織さんや福井裕佳梨さんが演じているのは、何とも時代を感じさせる。
音楽面では、奈々さんを筆頭にした七人のナナ役声優が『nana×nana』というユニットを組んでOP曲「Success,success」を担当し。ED曲「Birdie,birdie」は奈々さんの個人名義の曲だけど、今なおアルバム等には収録されていないレアな音源だったりする。


■2002年『プリンセスチュチュ』(るう/プリンセスクレール)
プリンセスチュチュ 5(cinq) [DVD]

プリンセスチュチュ 5(cinq) [DVD]

セーラームーン』シリーズでお馴染みの総監督・佐藤順一さんとキャラクターデザイン・伊藤郁子さんのコンビに加えて、OP&EDを岡崎律子さんが担当という強力スタッフ陣によるオリジナル作品。その内容もバレエと『白鳥の湖』をモチーフにした、何とも独特で幻想的な作風。
奈々さん演じる「るう」は、主人公のライバルとなるお嬢様キャラ。しかも、バレエの演目よろしく「悪役」を演じる運命になる…という影のあるキャラ。
本放送がCS局(キッズステーション)ということで、当時はあまり話題にならなかったものの、昨年「放送15周年」を記念したBlu-rayBoxのリリースとイベントが開催されるなど、今なお根強いファンを持つ作品。


■2004年『鋼の錬金術師』(ラース)
2度に渡ってアニメ化されている『ハガレン』の1作目。原作漫画の連載中にアニメ化されたため、物語後半部分はアニメオリジナルの展開になっている。そして、奈々さん演じる「ラース」もオリジナルのキャラクターで、その正体は敵陣営「ホムンクルス」の一人。
見た目は大人しそうな少年だけど、実は「憤怒」の名を持つ荒々しい性格で、狂気を剥き出しにして主人公たちに襲い掛かる。奈々さんが演じた中では珍しい少年役で、かつエキセントリックな悪役という強烈なキャラクター。
なお、この役が縁になったのか、奈々さんは『ハガレン』2作目のアニメ化となる『FULLMETAL ALCHEMIST』(2009~2010年)でもランファン役で出演している。


と、奈々さんのアーリーデイズを、簡単に振り返ってみました。亞里亞のようなロリっ娘ヒロインを演じていたり、るうのようなサブヒロインを演じていたり、ラースのような少年キャラ(それも敵役)を演じていたり、声優としての「得意分野」を模索していたような印象があります。
そして何より驚くべきは、デビューがキングレコードではなくパイオニアLDC(当時)だったこと。かく言う僕は『飯塚雅弓のいたいのとんでけ』のアシスタントだった頃から知っていて、"ハガキ"も読んでもらったことがあるので(←自慢)、「あの奈々ちゃんが立派になって…」と感慨深くなります。


今なお現在進行形で伝説を作り続けている水樹奈々さん。今出演しているアニメ作品も、いずれは「アーリーデイズ」として伝説化されて、後世へと語り継がれてゆくでしょう。